沖縄さんぽ

よみもの

地元紙(琉球新報・週刊タイムス住宅新聞)に連載していたものを掲載しています。

沖縄祈りの世界

6.ヒヌカンの御願日

ヒヌカン チイタチ・ジュウグニチ十二月二十四日一月四日(いずれも旧暦)は、ヒヌカンへの御願(ウグヮン)日である。今日でもオバアたちは、古くから伝わるこの習俗をきちんと守り、御願を欠かさない。

チイタチ・ジュウグニチ(一日・十五日)は、毎月やってくる御願日である。その日に特別に報告すべきことがない場合、チムガカイ(気がかりなこと)することがないときは、「家族の健康」・「家庭の円満」を祈願する。  

十二月二十四日は「上天の日の拝み」がおこなわれる。
この日に、ヒヌカンは天の神さまのもとに帰り、一家の一年中の出来事(善悪を問わず)を報告すると信じられている。
それだから、オバアたちの多くは「善い事だけを報告して下さい」と祈る。  
このような考え方は、中国のかまどの神の影響だとされているが、いつの間にか沖縄のヒヌカン信仰に定着したようである。  
一月四日(地域によっては十二月二十九日から一月三日)は、上天したヒヌカンがもどってくる日だとされ、「下天の日の拝み」がおこなわれる。  
ヒヌカンへの祈願は、このような定期のものばかりではもちろんない。家でおこるもろもろの出来事はまっ先にヒヌカンへ報告するし、節々のまつり事や冠婚葬祭にもヒヌカンへの祈願は欠かせないものである。

オバアたちによって繰り返される祈りは、困ったときの「神頼み」とはおおよそ違い、クヮッウマガ(子孫)の守護を願う慈愛と、ウヤグヮンス(親元祖)に捧げる深い感謝の念にあふれている。  

オバアたちにとって、ウートートゥする習慣は、知らずしらずのうちに、からだにしみ込み、生活のリズムをつくり出しているようにも思える。沖縄女性のからだに組み込まれたDNA(遺伝子)と言えるのかも知れない。  
ヒヌカンの存在さえも知らなかった若い女性がやがて、主婦となり一家を守る立場になったとき、祖母や母と同じように手をすり合わせ、家族の健康と盛運を願って一心に祈るようになるからだ。

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