沖縄さんぽ

よみもの

地元紙(琉球新報・週刊タイムス住宅新聞)に連載していたものを掲載しています。

沖縄祈りの世界

11.分家とヒヌカン

ヒヌカンへの報告 結婚などを機に、二男・三男などが分家して一家を構えるとき、本家のヒヌカンのウコール(香炉)より灰などを分けて、新しいヒヌカンを仕立てて家の守り神とする。
珍しいことに、今日現在でも、この古くから伝わる習俗をきちんと守っている地域が多い。

分家するときはまず、本家のヒヌカンに線香をともして、分家する旨を報告する。
その後に、ウコールの灰を指先で三回つまみ取り、それを分家先のウコールに移して新しくヒヌカンを仕立てる。灰といっしょに、本家より塩・みそ・しょう油なども分けて分家先に持っていく。
この儀礼はほぼ全島的に共通している。

ヒヌカンの神体が三個の石でつくられていた(現在でもごく一部地域で見られる)ころは、ヒヌカンに仕立てる石を、朝早く人目につかないように拾い、懐にしのばせて持ってきた。
ヒヌカンの神体がウコールにとってかわられた以降は、このような習俗もすっかり忘れ去られてしまったようだ。
また、地域によっては、灰をつまみ取る前に、トートーメー、屋敷のユシン(四隅)、フドゥ(豚便所)の神、ジョウ(門)の神などを拝むところもある。沖縄の民家から「フドゥ」が消えた今となっては、屋敷神の中でもっとも権威のあるとされた「フドゥの神」を拝む人も少なくなった。

別の地域では「ヌジファ」(ヌギファとも)を行うところもある。  
ヌジファとは、神の霊や死者の霊魂をその場所から抜き取って移すことだが、ヒヌカンを新しく仕立てるときや、イフェー(位牌)や墓などを移動するときにも行われる儀礼の一つである。

一般的には、花米・酒・餅などを供え、ウコー(線香十五本=タヒラ半)に火をともして霊が乗り移るように唱え、途中でいったん火を消す。それを移動する所へ持っていき、再び火をともして結びの御願をする。  
本家の灰を分けることは、同じ神のもとに入り守護されることを意味し、塩・みそなどを分けることは、本家を通して祖先とのつながりが永続的であることへの証とするものであろう。

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