お盆の上には本・すずり・筆・ソロバン・赤飯・お金・ハサミなどが置かれている。
車座になった大人たちが、ヤンヤとはやしたてながら見守る中、赤ちゃんがお盆ににじり寄る。満面の微笑を浮かべた赤ちゃんがお盆の上の小道具に手をのばす。
一昔前の、赤ちゃんの満一歳の誕生日を祝う「タンカースージ」の一コマである。今流に言えば、生後初めて迎えるハッピーバースデーということになるだろう。
本を取れば「ディキヤー」(勉強のできる人)、すずりや筆を取れば「ジーカチャー」(文筆家)、お金を取れば「モーキヤー」(金儲けのうまい人)、赤飯を取れば「ガチマヤー」(くいしん坊)転じて「クェーブーヌアン」(食べ物の福のある人)になるという訳だ。
筆者は何を取ったか確認していないが、「ディキヤー」にもなれなかったし、今もって「モーキヤー」にもなれそうもない。
その日は、親戚縁者や友人を招いてお祝いをするのだが、まずはじめに、ヒヌカンとトートーメーへの御願が行われる。
ヒヌカンに酒と花米とごちそう、それに赤ウブク三つをお供えする。そして「まーすぬゆー までぃん からだちゅくてぃ うたびみそーり」(長生きできますように丈夫な身体にしてください)などと唱えて、ウートートゥする。同じようにトートーメーも拝む。
その後に、先ほどの車座になった中で、赤ちゃんの将来占いをする。
この一連の儀礼のことを「タンカーユーエー」という。ほぼ全島的に見られた儀礼で、内容も共通していた。
タンカースージに集まった人は、よちよち歩きをしながらお盆に近づき、最初に何を取るかを温かく見守った。どれを手にしても、その子の将来を祝福し、健やかに育つことを心より願った。
バースデーケーキにローソクをともし、「ハッピーバースデー」を唄う昨今の祝いも悪くはないが、幸多かれと願う人たちがヤンヤとはやしたてながら、将来占いをする「タンカーユーエー」の儀礼もすてがたい。
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