第5回 ハチアッチー 赤ちゃんの額に「すす」

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 近年、神社の境内に「ハチアッチ」と墨書きされた看板が見られるようになった。どうやら、生まれた子の?初宮詣?のことをさしているようだ。
 「ひぬかんがなし はちんじゃー さびぃくとぅ からだきみそーり」。赤ちゃんを抱いた母親が、生後はじめて外出するときに、ヒヌカンにむかって唱えることばである。初外出のことを「ハチアッチー」という。ハチアッチーの際にも、ヒヌカンの加護がありますように、と祈ったのである。
 出かける赤ちゃんの額にすす(なべやかまどの)をつけながらオバアは、「うやる んじゅんどー ぬーん んじゅなよー」(お母さん以外、何も見るんじゃないよー)という呪文を唱えた。そして、母親のふところには弓やハサミ、小刀などをそっとしのばせた。
 魔ものに赤ちゃんの魂が吸いとられないようにというまじないである。すすをつけたのは、きれい好きな魔ものが近づかないためだとされているが、ヒヌカンの守護を願う気持ちもこめられていたのであろう。ハサミなどの小道具は魔よけである。
 母子のむかう先は、大方の場合、母親の里であった。ひらたく言えば「はじめての里帰り」ということになる。
 母子をむかえる里では、親戚縁者はむろんのこと、隣近所の人たちもかけつけて、ささやかな祝儀を赤ちゃんのふところにしのばせた。祝儀のことを「マースデー」とよんだ。
 もともとは、バショウの葉などに塩そのものを包んだところから「マースデー」とよばれるようになったようだ。塩によって赤ちゃんをけがれから守るという意味があった。
 昨今では、塩のかわりにお金を包むのが当たり前になったが、それでもお年寄りは「マースデー」とよぶ。
 塩を包んだという古俗の名残をとどめる「マースデー」ということばには、生まれた子の健やかな成長を願う純朴な人びとの気持ちがよくあらわれている。
 ヒヌカンの加護を願い、ささやかなマースデーをしのばせた美風を、初宮詣と混同してはならない。

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このページは、座間味 栄議が2008年2月 5日 16:53に書いたブログ記事です。

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